【第74回 Spolink & encounterセミナーレポート】明日から活かせる血液検査結果の見方~コンディション管理の指標として~

ブログ班の錦戸です。
今回は、2022年1月26日(水)に行われたセミナーのレポートです。

講師は本セミナーで度々登壇されているスポーツ内科医の田中祐貴先生。
職業や関わっているスポーツ競技によって、血液検査を見る機会は限られているかもしれません。
ですが、まさに明日から活かせるそう感じさせられる講義内容でした。

田中先生は
「基準値は医師によって異なる」
「結果の数字に捉われないように」
「血液検査は選手の背景や今後のことなども踏まえて活用することが大事」
だと再三語られていました。

セミナー内で紹介されていた検査項目と目安の数値を記載しますが、
そのまま当てはめるのではなく、あくまで参考値であることは念頭に入れておいてください。
また、それぞれの数値は基本的に中学生以上が適応と考えてくださいとのことでした。

「アスリートの血液・尿検査結果の見方」

セミナーの要約をせっせとまとめていたのですが、とんでもないものを発見しました。
それは講義の冒頭でも話されておりましたが、田中先生が作成された一つのPDF。
こちらに全て分かりやすく集約されており、僕がここで紹介させていただくのは大変おこがましいことだと感じました。

ぜひ、こちらのツイートのリンク先からダウンロードしてみてください。

資料にはなく、セミナー内でお話しされていた内容の中から個人的に大事だと感じた一部を補足として以下に取り上げることにします。
☆の4項目は日常の臨床でまず見る重要な項目だそうです。

<スポーツ貧血>
☆【ヘモグロビン】
血液検査で最も重要視する項目の一つ。

☆【フェリチン(Fer)、血清鉄(Fe)】
お金で例えるとフェリチンは銀行のお金、血清鉄は財布のお金。
一般的には銀行のお金(蓄え)の方が多く、財布のお金は基本一定でなくなったら銀行から引き出す。
それと同様に身体では血清鉄が先になくなり、次にフェリチンが使われるイメージ。

ヘモグロビン正常でもフェリチンが低下していればパフォーマンスも低下するため注意。
また、血清鉄が低いからといって、貧血であるとは言い切れない。

【相鉄結合能(TIBC)】
必ずというわけではないが、余裕があれば検査するもの。

【亜鉛(Zn)】
亜鉛欠乏性貧血は大学生以上の男性、また陸上競技に多い印象であり、
ヘモグロビンは減少しているが、フェリチンが低下していないときに考えられる。
プロマックという薬は、本来胃薬であるが亜鉛を多く含んでおり有用。

<栄養状態(エネルギー状態)>
☆【 総蛋白(TP)】
総蛋白には蛋白質はもちろん糖質も含まれる。

☆【コリンエステラーゼ】
医師によっては測らないことがあるが、最悪総蛋白だけでもよい。

<栄養状態(エネルギー状態)・脱水・骨代謝(成長)>
【クレアチニン】
筋肉から出てくる老廃物。クレアチニンは筋肉量によって異なり、ムキムキなプロレスラーだと1.2、か弱い高齢者の場合は0.5くらいが妥当である。高齢者で1.2なら腎臓が弱ってきていることが示唆される。

【尿素窒素(BUN)】
BUNが低ければ調子が良い場合が多く、逆に高値を示せば異常がある可能性が示唆される。

【ALP】
2021年4月から測定方法の変更があり、注意が必要。骨折時も骨の修復のため値は上昇。

 

感想

非常にわかりやすかったのですが、これらの数値を覚えておくことは難しそうです。
冒頭でも紹介した田中先生のPDFを常に携帯しておくといつでも見返せて有用かと思われます。
ぜひ今一度ダウンロードしてみてください。

また、様々な情報とともに検査結果を活用することが重要だとわかりました。
自己判断に委ねるのではなく、まずは田中先生のようなスポーツ内科医を訪れてみるのもいいかもしれませんね。

講師紹介

【講師】
田中 祐貴 先生
・ゆうき内科・スポーツ内科 院長
・日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
・日本障がい者スポーツ協会公認 障がい者スポーツ医

田中先生の情報はSpolinkの検索ページ先からご覧ください
田中裕貴先生の情報

田中祐貴先生のTwitter

【過去のセミナーレポート】
内科的コンディショニングでパフォーマンス向上を目指そう!
「スポーツ内科医のすべらない話~スポーツ貧血~」
「アスリートの喘息とスポーツ内科の未来」
「内科的問題から選手を守る!/連携に必要なスポーツ内科基礎知識100」

次回告知

< 第75回 Spolinkセミナー >

【日時】2022年2月9日水曜日 21:00~22:30

【テーマ】
スポーツ安全の最前線~現場マストの医学知識~

【講師】
二重作 拓也 先生

・スポーツ安全指導推進機構
・スポーツドクター

【内容】
スポーツに関わる選手、指導者、コーチ、トレーナー、医療者、保護者。
全ての大人に必要な最低限の知識をスポーツドクターがわかりやすく共有します。

【ファシリテーター】
奥村 正樹 先生
・Spolink JAPAN代表
・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー / 鍼灸師

 

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