こんにちは!
ブログ版の山城です。
オンラインセミナー番外編のレポートです。
2021年最後に行われた、スポーツ内科医の田中裕貴先生による4時間にも及ぶ内容となっています!
田中先生の講義は毎回面白く発見がたくさんあります。
今回も勉強になることばかりでした!
セミナー後から田中先生がTwitterで
スポーツ内科基礎知識100を毎日1つずつ公開しているのでぜひフォローしましょう!
28日夜の4時間セミナーにご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
①スポーツ内科基礎知識100の配信開始
②アスリートの血液検査結果の見方 無料公開
③スポーツ内科テキストmedicina 無料配布
④スポーツ内科ネットワーク 拡大などやっていきます。#スポーツ内科
— 田中祐貴(スポーツ内科医) (@Tanaka_Sponai) December 29, 2021
田中先生の目標はスポーツ内科を保健体育の教科書に載せること!
田中先生の人生の目標は「スポーツ内科を保健体育の教科書に載せること!」
田中先生はスポーツ内科を広めるためにさまざまなクレイジーとも呼べるような活動をしてきたそうです。
その活動でメディアに取り上げられ取材の時にスポーツ内科の話をして普及に努めているとのことでした。
そのクレイジーな活動の一部は
・田中先生のクリニックでコロナワクチンを7万人に摂取(1日あたりMAX500人)
・コロナ対応で得られた収益5,000万円をコロナによって活動の制限されている子ども・スポーツ分野に寄付
この活動はメディアから注目を集め取材を受けたそうです。
2022年も活動を色々考えているそうなので注目ですね!
理由としては
「運動・スポーツによるメリットはもちろんだが、デメリットもあること。
そうならないためにどういうことをしたらいいのかの正しい知識を小中学生の段階で持ってほしい」
という思いからだそうです。
その熱い思いを参加者に伝えてもらったところからセミナーが始まりました。
セミナーの内容も熱い気持ちがこもった内容でした。
第一部 どんな選手をスポーツ内科に紹介したらいい?
セミナーに参加した皆さんが気になること
それは「スポーツ内科にどんな選手を紹介したらいいか」ですよね。
田中先生の答え→ 「わからない」
どういうことなのか?
それはどんな選手でもスポーツ内科疾患の可能性があるからだそうです。
その理由を実例を交えてわかりやすくお話しいただきました。
スポーツ貧血でスポーツ内科を受診した方は陸上長距離選手が多いそうです。
田中先生の病院でも陸上選手の受診が約8割を占めるとのことでした。
理由はというと
長距離選手が多いのは道具を使わずに肉体のみで走る競技なので、
貧血が成績に直接影響しやすいためスポーツ内科を受診をすることが多くなるとのことでした。
逆に道具を使うスポーツの場合には
技術力や戦略が成績に影響しやすいので貧血に気がつきにくい側面があり、
スポーツ貧血になっていてもスポーツ内科への受診は少なくなってしまうそうです。
スポーツ貧血と診断された選手の中で一番多い症状は「息切れ」だそうです。
また意外にも「無症状」が一定数いるそうです。
技術や戦略が成績に大きく影響するスポーツや無症状のパターンもあるので、
すぐにスポーツ内科を受診するというのは難しいようです。
現場で選手に関わるトレーナーや栄養士は選手の様子や成績や記録の相談を受けた時に
「ちょっとこれはおかしいんじゃないか?」と感じたらスポーツ内科の受診をすすめてくださいとのことでした。
<どんな選手をスポーツ内科に紹介すべきか?>
・ 息切れ、咳、倦怠感、無月経、腹痛などの症状のある選手
→息切れは貧血を疑い、咳運動誘発性喘息を疑い、倦怠感ではオーバートレーニング症候群やうつを疑って診療
・ 症状はないがパフォーマンス低下、記録の伸び悩みを実感している選手
→明らかな症状はないが記録の低下や伸び悩みをしている場合も対象になる
・ 無症状の選手も対応となる(→メディカルチェック)
→無症状の場合でも貧血が見つかることが少なくない
スポーツ内科が対象とするのは「全ての選手」
症状のある選手から無症状の選手まで受診した選手のニーズに合わせて対応するのがスポーツ内科の仕事とのことでした。
スポーツ内科はどんなことをしているのか?
スポーツ内科はどんなことをしているのか気になりますよね。
僕も気になっていました。
実際の田中先生の仕事を簡単にまとめると下記の内容になるそうです。
<スポーツ内科の仕事>
・スポーツ内科診療
→なんらかの不調を抱えた選手の原因を探り治療に結びつける
・ 内科的メディカルチェック
→ 主に無症状の選手を対象にスポーツ内科疾患の早期発見を目的とする
・ 新型コロナPCR検査
→ 集団検査、出張検査に対応
病院で診療やメディカルチェックをする以外にも学生チームや社会人チームに出張して採血などをすることもあるそうです。
現在はコロナのPCR検査も対応しているそうで、
田中先生の病院では院内にPCR検査ができる設備が整っているので最短で2時間で結果が出せるとのことでした。
遠征前などはPCR検査をしなければならないので2時間で結果が出るのはとても助かりますね。
第2部 スポーツ貧血の基礎知識
第1部で出てきた「スポーツ貧血とは?」
貧血になると全身に酸素が行き渡らなくなってしまい、
酸素不足になってしまい様々な症状が出て競技パフォーマンスに影響してくるということでした。
<スポーツ貧血>
◇運動・スポーツが原因で生じる貧血をスポーツ貧血と言う
◇ 最も多いスポーツ内科的問題
◇主に鉄欠乏が原因
◇年代競技レベルにもよるが有病率は少なくとも約10%以上
◇症状:息切れ、動悸、易疲労性、倦怠感、氷食症など
◇筋肉への酸素運搬能力が低下し、パフォーマンスの低下(特に持久力の低下)を引き起こす
◇スランプや伸び悩みの原因となりうる
とある県の国体選手の貧血有病率の調査報告のデータを見せてもらったのですが
そのデータの中で多い年度では27.5%もあったそうです。とても高いですね。
スポーツ貧血の原因は「鉄欠乏」「エネルギー不足」「溶血」など
その中で一番多い原因は「鉄欠乏」だそうです。
しかし、鉄が欠乏していないにも関わらず貧血になっている場合があるそうで、
その原因にエネルギー不足があるそう。
鉄欠乏と同じくらい「エネルギー不足」にも気をつけてほしいということでした。
鉄欠乏に関しては鉄の需要が増加する→鉄摂取不足・吸収低下や鉄喪失原因になるとのことです。
またフェリチン(貯蔵鉄)が足りていてもエネルギーが不足していれば貧血になるとのことでした。
<スポーツ貧血の治療>
◇スポーツ栄養士による栄養指導
◇鉄剤内服
◇原則的に鉄剤注射はしない
田中先生は鉄剤注射を基本的にしないそうです。
理由としてはメリットがなくデメリットが大きいから。
鉄剤注射の話で怖かったのが
注射をして一時的に体内に鉄が過剰にある状態になると心臓や肝臓や神経などに鉄が沈着して
機能障害を起こす可能性が”一生残る”可能性があると話されていたことです。
さらに鉄剤注射を繰り返してると注射をやめてもあまり血を作らなくなることがあるそうです。
仮説として”人間の体が鉄が十分あるので作らなくてもいいと勘違いして血を作らなくなっているのではないか?”
とのことでした。
高校・中学駅伝の強豪校の中で鉄剤注射をしている学校があり問題になったことで
日本陸上競技連盟は鉄剤注射の原則禁止と指針を出し、レース前後の血液検査の提出するルールになったそうです。
中高生が鉄剤注射を打っているのはかなりの衝撃でした。
「鉄剤注射を打つと持久力が上がるのではないか?」という間違った考えで鉄剤注射を打っている場合があるそうです。
<適切な鉄剤注射の適応>
◇副作用が強く、経口鉄剤を内服できない場合
◇出血などで鉄の喪失が多く、経口鉄剤では間に合わない場合
◇消化器系疾患で内服が不適切な場合
◇鉄吸収が極めて悪い場合
など
鉄剤注射は絶対ダメというわけではなく、
不適切な鉄剤注射を避けるようにすべきということでした。
スポーツ貧血についての講義の最後は
アスリートの血液検査結果の読み方の超基本編として教えていただきました。
定期的に血液検査をしている方々はとても参考になる部分でした。
「血液検査の結果はその選手の最近の状況を語りかけてくる。とても大切な情報源」
ということでした。
スポーツ貧血の原因は
練習のしすぎによる過剰なトレーニングや休養不足、不適切な食事、過度の精神的ストレス
などがあるそうです。
スポーツをしているとどうしても練習をすればするほど競技パフォーマンスが向上すると思い
追加で練習したり、休みを返上してトレーニングをしてしまいがちですね。
しかし、田中先生は「しっかり休むことはトップ選手にはとても大切な要素の一つ」だとおっしゃっていました。
しっかりトレーニングしたらしっかり休むこのバランスがパフォーマンス向上の大切な要素の一つですね!
以前に、睡眠に関しては芳賀先生、リカバリーに関しては笠原先生に
講義してもらったのでその時のレポートもお読みください!
【第53回 Spolink & encounterセミナーレポート】パフォーマンスと睡眠〜睡眠の取り方でパフォーマンスを上げる〜
【第52回 Spolink & encounterセミナーレポート】スポーツ選手におけるリカバリー戦略〜パフォーマンス向上とスポーツ傷害予防の両立に向けて〜
第3部 無月経
第3部は無月経
月経に関しては男性トレーナーとしてはなかなか「聞きにくい」という話題が
Spolinkのメンバー同士でも話になります。
最初に月経に関しての基礎基本から丁寧に解説していただきました。
月経のメカニズムから教えていただけました。
基本的な月経のことを理解できさらにパフォーマンスに関係しているということになれば
女子選手にも信頼してもらえ男性トレーナー側も気まずさがなく確認できるようになるのではないかと感じました。
無月経とエネルギー不足と骨粗鬆症は三主徴として女性アスリートにとって問題になっていますね。
月経と骨密度の関係は深く
初経がきてから2〜3年間は骨密度が急上昇する非常に大切な期間とのことでした。
骨は20歳までしか強くならないそうで、それ以降はほとんど何をしても強くなりにくく、
中高生の時期に無月経の状態が続いてしまうと骨が弱いまま一生を過ごすことになるとのことでした。
なんと、無月経の状態で20歳を迎えると70歳のおばあちゃんと同じ骨の強さになるそうです。
その状態でスポーツを続けることは骨折のリスクや
その後の人生は骨が脆いまま生きていくことになるリスクを抱えることになります。
根本を辿ると動いた分(必要な量)のエネルギーを摂取できていないことに原因があるそうなので
まずは「ご飯をしっかり食べること」だそうです。
女子大学生アスリートのうち持久系競技の21.7%、審美系競技の12.2%が無月経で
持久系競技アスリートの49.1%が疲労骨折をしたことがあるとのことでした。
非常に多いなと個人的に感じました。
また疲労骨折を起こした年齢は16〜17歳が最も多いそうです。
このことについて田中先生は
「高校2年生ごろで将来有望な選手が怪我で挫折して競技を諦めてしまうというのは非常に残念。
そういったことを防ぐためにもしっかり食べて生理がちゃんときて骨が強くなる状態を目指してほしい」
ということでした。
防げる怪我はしっかり防いでいきたいですね!
月経に関してはピルの話も出てきていました。
日本人女性アスリートはピルの使用率がかなり低いそうです。
月経とパフォーマンスには相関があり、一般的に月経前〜月経中はパフォーマンスが低下するそうです。
ピルを有効活用できるとパフォーマンスを一定にしやすいとのことなので女性アスリートは情報収集してみてほしいということでした。
女性アスリートの三主徴に関しては
エネルギー不足は栄養士と無月経は婦人科、医疲労骨折は整形外科医の
3つの領域を跨いでいるのでそれぞれと連携できるのが理想的だとのことでした。
女性アスリートに関する「エネルギー不足と三主徴」と「ピル」に関しては以前
鮫島梓先生に講義をしていただいているのでそちらのレポートもお読みください!
鮫島先生のおすすめのピルの情報も載っています。
【第41回 Spolink & encounterセミナー】女性アスリートを支える産婦人科医〜特異的疾患と正しい服薬(ピル)について〜
第3部② オーバートレーニング症候群
オーバートレーニング症候群を簡単にいうと
「心身の疲労が溜まりまくっている状態」だそうです。
症状は身体症状と精神症状に分けられ
身体症状だと全身の倦怠感、体重減少、食欲低下など
精神症状では不眠、焦燥感、意欲の減退、抑うつ感など
オーバートレーニング症候群は明確な診断基準がなく、
診断には他の内科疾患でないことを判断する必要があり診断がとても難しいとのことです。
オーバートレーニング症候群疑いで受診してもなんらかの疾患が見つかることが多いとのことでした。
大きな疾患を見落としていないか?という部分でとても神経を使う病態とのことです。
トップアスリートは精神的・身体的ストレスにさらされやすく
オーバートレーニング症候群とうつ病は合併は多いそうです。
治療としてはベースラインまで疲労が回復してくるまで待ち
完全休養が第一になるということでした。
回復してきたらすぐいつも通りのトレーニング量に戻すのではなく段階的に戻していくこと、
練習メニューの考え直すことが再発の予防になるそうです。
「オーバートレーニング症候群」は
学生の時にはなんとなく聞いたことがある言葉でした。
今回のセミナーを聞いてて一番、学生の時に詳しく知っておきたかったなと感じました。
頑張れば頑張るほど競技力が向上すると思っていた
当時の自分にセミナーのこの部分を切り取ってLINEで送りつけたい!!
それくらい前のめりで話を聞いてました。
スポーツ内科基礎知識100配信中!
セミナー後から田中先生がスポーツ内科基礎知識100の配信を開始しています。
他にも企画がたくさんです!
ぜひ田中先生をフォローしてください!
28日夜の4時間セミナーにご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
①スポーツ内科基礎知識100の配信開始
②アスリートの血液検査結果の見方 無料公開
③スポーツ内科テキストmedicina 無料配布
④スポーツ内科ネットワーク 拡大などやっていきます。#スポーツ内科
— 田中祐貴(スポーツ内科医) (@Tanaka_Sponai) December 29, 2021
★スポーツ内科基礎知識1
アスリートがスポーツ内科的な問題を抱えると、息切れや倦怠感など明らかな「症状」を認める場合と、症状はないがパフォーマンス低下や記録の伸び悩みなどの「不調」を訴える場合がある。
不調の表現の仕方は競技・選手により異なる。#スポーツ内科— 田中祐貴(スポーツ内科医) (@Tanaka_Sponai) December 30, 2021
感想
怒涛の4時間セミナーですが
あっという間にすぎるくらい内容が濃かったです。
レポートはかいつまんで載せていますが実際の内容はもっとすごいです!
参加された方はとても参考になったのではないでしょうか。
田中先生の熱量は4時間ずっと変わらずすごかったです。
本気さが伝わってくるセミナーでした。
選手として田中先生のようなお医者さんが近くにいたら心強いなと感じました。
セミナー後には質問がたくさん飛んできていて参加者の皆さんがとても興味津々でした!
6年前に田中祐貴先生のスポーツ内科セミナーを受講していなかったらMakiもここまで傷病なくテニスを続けられなかったと思う
指導者、親は是非ともスポーツ内科を知ってほしい
今日は感謝の気持ちと共にスポーツ内科を復習しました
運動誘発性喘息、貧血、無月経#スポリンク内科 https://t.co/2yLtysFiYf
— 武井@ビッグサーバ目指して5人6脚 (@BlueKitano) December 28, 2021
内科医問題から選手を守る!
参加しました知っているつもりでも、知らないことが沢山あり、さらに知識を広げるための団体セミナーも知ることができました
今後も色々なセミナーに参加させてもらって勉強し、選手に還元できる活動を進めたいと考えています#スポリンク内科— やよち@【無料】バレー初心者指導効率化まとめ配布中 (@yayochi_volley) December 28, 2021
講師紹介
【講師】
田中 祐貴 先生
・ゆうき内科・スポーツ内科 院長
・日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
・日本障がい者スポーツ協会公認 障がい者スポーツ医
田中先生の情報はSpolinkの検索ページ先からご覧ください↓
当院で使用している「アスリートの血液・尿検査結果の見方」の最新版を公開します。これを手に入れたからと言ってすぐに血液検査結果を解釈できるわけではないけれど、参考にはなるはず。詳細については今後、つぶやいていきます。 pic.twitter.com/xuplL7ggZG
— 田中祐貴(スポーツ内科医) (@Tanaka_Sponai) December 29, 2021
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