ご無沙汰しております。
Spolink JAPANコアメンバーのいっきゅー医学生(@ikkyusportsdr)です。
いきなりですが、皆さんの中で今一番盛り上がっている印象を受けるスポーツは何でしょうか?
世界陸上、欧州サッカー、バレーボールなど色々とあると思いますが…
なんといっても、日本でワールドカップが開催中のラグビーではないでしょうか。
ジャイアントキリングが起きにくいといわれているこのラグビーで、先日、日本が世界ランク元1位のアイルランドを破ったり、トップ選手が日本の観光地に現れたり、海外のサポーターの半端ないビールの消費など話題に事欠きません。
そんなラグビーですが、審判と選手の対話や、ノーサイドの笛が鳴った後の健闘を称えあう姿など紳士的な面も注目されています。
しかし何といっても激しいタックルやボールの奪い合いというフィジカルコンタクトの多さによる迫力が一番の魅力ではないでしょうか。
そのため、怪我も多く、プレー中にトレーナーらがグラウンド内に入り、処置を施している姿も見ることができます。
今回はそんなラグビーに多い怪我である脳震盪についてご紹介していきたいと思います。
脳震盪とは?
一度は耳にしたことがある怪我だと思いますが、定義を言える方はどれだけいらっしゃるでしょうか。
ここからはよせやん先生(@sports_doctor93)のブログから引用させて頂きます。詳しく知りたい方はリンクからぜひ記事をお読みになってください。
ではまず定義です。
脳震盪とは機械的外力により生じた一過性の神経機能障害に由来する臨床症候群である。
となっています。
そして症状は意識消失や、記憶力の障害、反応時間の低下、平衡感覚障害、頭痛、めまい、耳鳴りなど多岐に渡るそうです。
この症状としての発現頻度は頭痛が92.2%、めまいが68.9%、集中力低下が58.3%と多く、一般的に脳震盪の症状と思われている意識障害は5.6%、逆行性健忘は9.8%、外傷後健忘は13.9%と少ない結果であったと報告されています。
僕自身、脳震盪はもっと重症感のある怪我だと思っていたため、頭痛やめまいだけでは脳震盪とは判断できず、見落としてしまいそうです。
そのため、脳震盪であるか否かを判断する方法が重要になってきますね。
脳震盪の診断方法は?
上図はSpolink JAPAN 発行の頭部外傷マニュアルの一部です。
脳震盪が疑われた場合まずは意識障害の確認をします。
意識障害の確認は下図を参考に行います。
ここで重要なことは意識障害や、その他のめまいなど脳震盪を疑う症状があった時には必ずすぐにプレーを中止する、ということです。
脳震盪だと確定しなくても疑いがあれば同じようにプレーを中止しなければなりません。
では、そんな脳震盪になってしまった場合どのように競技に復帰していけばいいのでしょうか。
競技復帰するまでの注意点
脳震盪からの復帰のキーワードは段階的競技復帰(GRTP)です。
復帰までの過程を次の六つに分けて、症状が出ないことを確認しつつ進んでいきます。
1.活動なし
2.軽い有酸素運動
3.スポーツに関連した運動
4.接触プレーのない運動
5.メディカルチェックを受けた後に接触プレーを含む訓練
6.競技復帰
ここでのポイントはそれぞれの段階に24時間の間隔を置くということです。
また、19歳以下の若年者では特に慎重な対応が求められます。
詳しくはよせやん先生の記事をご確認ください!
怖いセカンドインパクト症候群
なぜここまで慎重な対応が脳震盪に求められるのでしょうか。
その答えがこのセカンドインパクト症候群になります。
セカンドインパクト症候群とは、脳震盪あるいはそれに準ずる軽症の頭部外傷を受け、数日から数週間後に2回目の頭部外傷を負い、致命的な脳腫脹をきたすもの
をいいます。
一回目、二回目の怪我がそれほど重いものではなくとも発生する可能性があります。
そして最も注視すべきは死亡率が30~50%と高いこと、何らかの神経学的後遺症を残すということです。
頭をぶつけなくても脳震盪??
さて、ここまで紹介してきた脳震盪という怪我ですが、実は先日自分の部活動で受傷者が発生しました。
サッカーのミニゲームの際の出来事だったのですが、頭をぶつけたような場面は無かったので脳震盪という考えには全く及びませんでした。
唯一考えられる場面はドリブルでつっかけていき、タッチが長くなったところでディフェンスと交錯し、右足を軸に回転しながら倒れていたことでした。
そこまで激しい接触には見えず、本人もすぐに立ち上がりプレーを継続していました。
しかしそのプレーのあと、近くにいたプレーヤーによると頭が痛いといって部室の方に歩いて行ったようでした。
僕も遠くからどうしたのかと声を掛けたのですが、返答はありませんでした。
ただ、自力で歩いていたことから聞こえなかっただけかと思い、ミニゲームが終了してから声をかけなおすことにしました。
今考えるとこれは脳震盪の兆候だったように思えます。
そして、ミニゲーム終了後、マネージャーから受傷者が記憶が無いと言っていると聞かされ慌てて声を掛けました。
すると、普段は物静かなタイプなのですが、ひどく混乱したように、記憶がない、自分が直前何をしていたかわからないと言ってきました。
ドリブルで交錯した場面も覚えておらず、脳震盪を疑い、病院へ連れて行きました。
診断の結果、意識消失もなく安静に、ということで大事には至りませんでしたが、自分としても間近で脳震盪の患者を見てとても驚きました。
おわりに
ラグビーに関わらずすべての身体的接触があるスポーツで脳震盪が起こる可能性があります。
もしものためにも対応は覚えておきたいと感じました。
また、医療者が、選手自身に危険性をしっかり説明ができることが重要と感じました。
それにより、無理な復帰を防ぎ、セカンドインパクト症候群などを予防することができますね。