【第41回 Spolink & encounterセミナー】女性アスリートを支える産婦人科医〜特異的疾患と正しい服薬(ピル)について〜

ブログ班の山城聖也です。
3月10日に行われたセミナーのレポートを書かせてもらいます!

今回のテーマは「女性アスリート」です。
産婦人科というと妊娠から出産のときに通うというイメージが強いでしょうか
女性にとっては切り離せない’’生理’’についての診療もされているということを知らない男性もいるかもしれませんね。

男の僕にとって生理は未知の話です。
一般の女性から女性アスリートまで
パーソナルトレーナーとして関わる身として非常に興味がある内容でした。

別の機会に生理について学んでいるつもりでしたがまだまだ知らないことが沢山あり、
今回のセミナーを受けて男性として知っておく必要があると感じました。

女性アスリートを支える産婦人科医

今回の講師は鮫島 梓 先生
鮫島先生は女性クリニックWe富山にて産婦人科医と勤務され
一般の女性から女性アスリートまで診療されています。
女性クリニックWe富山

多くの女性アスリートに関わっている中から
・女性アスリートの特異的疾患やその特徴
・先生ご自身の診療や経験談
・生理とコンディション、服薬(ピル)
についてお話していただきました。

セミナーの初めに鮫島先生は
「産婦人科医として女性アスリートにはベストコンディションで戦ってほしい」
という思いでいることを話してくれました。

生理はネガティブに思われていることが多く
理由としては生理がコンディションに影響するからということでした。

国立スポーツ科学センタ―の月経に関するコンディション調査によると
一番調子がよくなるのが月経後数日という回答が多かったそうです。
人によっては月経中にコンディションが良くなる方がいるのが個人的には意外でした。

 

〈月経困難症〉
スポーツに影響する生理の症状として生理痛(月経困難症)があげられていました。
女性の1/4~1/3に見られ25歳以下の若い女性で頻度が高い(40%)
何らかの痛みによっては90%の女性が感じているそうです。
日常生活の中では気にならない痛みであっても
女性アスリートにとってはパフォーマンスに影響が出てくる可能性があるそうです。

月経困難症の分類
1.機能性(原発性)月経困難症(若年女性に多い)←今回はここを詳しく話していただきました
2.器質性(続発性)月経困難症(子宮内膜症、骨盤内炎症、子宮筋腫など)

痛みが出る理由
機能性月経困難症で痛みが出る理由としてはプロスタグランジンが分泌されるからだそうです。
このプロスタグランジンが子宮の筋肉を収縮させる働きがあり、過剰に分泌されると生理痛になると言われているそうです。
月経が始まって5年以内だと子宮は十分に発達しておらずプロスタグランジンが多く分泌されて生理痛が起こるとのことでした。

生理痛の病的な痛みの判断としては「日常生活に影響しているかどうか?」が基準となるということで
「自分自身が生理痛がツライ」と感じたら治療のラインになるということでした。

女性アスリートとピル

国立スポーツ科学センターの「月経期にコンディションが悪いと答えた選手の割合」の調査によると
月経痛ありで鎮痛剤を飲んでいる選手は37%
月経痛ありで鎮痛剤を飲んでいない選手は25%
だったそうです。

〈月経困難症の治療〉
・セルフケア:温める、休む、締め付けのキツイ服を着ない
・鎮痛剤
・ホルモン治療

鮫島先生のおすすめの鎮痛剤はエルペインだそうです。
エルペインは月経痛に特化した痛みどめで効果が高いそうなので女性の皆さんはお試しください。
もちろんドーピング物質は含まれていません(2021年3月9日現在)

鎮痛剤を飲んでもうまく聞かない場合は低用量ピルをすすめるとのことです。

<低用量ピルを進める理由>
・毎回痛い、鎮痛剤飲んでも痛い場合でも痛みが和らぐ
・月経を試合とかぶらないようにする
・月経量が減る(貧血になりやすい人におすすめ)
・月経前症候群(PMS)もよくなる

’’ピルの最大のメリットは月経移動ができること’’

女性アスリートの場合は大きな大会などが生理の予定日に当たる場合
ピルで生理のタイミングを移動して’’大会中の生理’’を避けることができるということでした。

これだけのメリットがあるにもかかわら
日本ではピルのネガティブなイメージが強いとのことでした。
鮫島先生が見せてくれた富山県国体選手を対象にしたアンケート調査では
「今後も希望しない」と回答した方が45%、ピルについて知らないと回答した方が29%もいたそうです。

しかし、海外ではどんどん使用率が増えているそうで
欧米では2008年の北京オリンピック出場女性選手の83%が使用していたそうです。
それに対し日本では2012年のロンドンオリンピックの時には7%しかいなかったそうです。
ちなみにリオオリンピックの時には少し増えて25%を超えたそうです。

鮫島先生は「この状況で同等に戦えるのか?」と感じているとのことでした。

日本の女性トップアスリートの中でピルの服用が増えた理由の一つに
なでしこジャパンで活躍した澤穂希選手がキッカケだそうです。
澤さんが使用してよかったならということで周りの選手も使用を始めていったそうです。

鮫島先生はピルを提案する時に患者さんの知っているアスリートが使用していることを伝えて
ピルを使用するハードルを下げるようにしているそうです。

ピルを試しても合わない場合があるそうですが
その時はすぐに諦めずに産婦人科医の先生と相談して
色々ある種類の中から自分に合う種類を探してほしいということです。

<ピルを使用する時の注意点>
女性のコンディションを整える為にメリットも多いピルですが
注意しないといけないこともあります。

・試合の2~3ヵ月前から使って副作用の出方の確認をする
・遠征時の移動で水分補給をしこまめに足を動かすこと(エコノミークラス症候群対策)
・手術時の対応(服用を主治医に伝える)

副作用が出ることがあるので服用している場合は上記の3点に気を付けてほしいとのことです。

セミナーの感想

個人的な感想としてはピルに関してのネガティブなイメージが男性だけでなく
女性にも思っていた以上にあることに驚きました。
女性アスリートのみなさんには「生理だから痛いのは仕方ない」で諦めてしまわないように
アスリートとしてベストパフォーマンスを出せるように上手くピルを活用できるようにしてほしいです。

そのためにも安心して生理に関しての悩みを相談できる環境が大切だと感じました。
男性の僕ですが、知識を付けて関わる女性アスリートへ悩みに対しての提案ができるようにしていきたいと思います。

参加者の方の感想⇩

https://twitter.com/kunibon_AT/status/1369665825859235842?s=20

 

月経に関しての悩みや疑問を解決するヒントになるサイト

今回のウェビナーにご協賛いただいた「富士製薬株式会社」様は
女性のための健康支援サイト&アプリ「Lilula」を運営されています。

こちらでは産婦人科医の先生が生理の悩みをはじめとした
女性のカラダのことに関する疑問質問に回答してくれたりするそうです。

生理の豆知識などの項目もあるので男性も理解するために見てみるといいと思います!

Lilulaはこちらをクリック

 

 

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