第3回目になる学生からのメンバーへのインタビュー企画です!
今回は内科医の烏山先生にスポーツ貧血についてお聞きしました!
今回のインタビュアー:舟山俊希 医学科4年 陸上競技部で1500〜10000mを専門にしています!
今回はスポーツ内科の疾患で最も馴染みがあるであろう、スポーツ貧血についてお話をお聞きしました!
原因や症状、予防など実践的な内容となっているので、ぜひ見ていただきたいです!
スポーツ貧血をきっかけにスポーツ内科に興味を持ってもらえれば幸いです!
烏山司
消化器内科医
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
産業医
専門は消化器内科ですが、内科的スポーツ診療に携わっています。
まだまだ分からないことも多いですが、選手の方々の悩みをお聞きし、
少しでもお役に立てる様な診療を心がけています。
スポーツ貧血とはなんですか?
舟山:さっそくですがスポーツ貧血とはどういうものなのか?どういう症状があるのかを教えていただきたいです。
烏山先生:はい、わかりました。”スポーツ貧血”とは通称みたいなもので、スポーツを起因して起こるもので基本的に貧血に注目は集まるんですが、栄養などをはじめ総合的に足りないものが多くて見える化されやすいのが貧血という風に捉えています。
症状としては息切れ・動悸・疲れやすい・症状はないが記録が伸びない・今まで通りのパフォーマンスができないなどが中心になってきます。
ざっくり言うといわゆる運動を起因にして鉄不足になって貧血になる、鉄を消費する大元が運動であるものをスポーツ貧血と言ってもいいと思います。その症状としては一般的な貧血とかなり似ています。
舟山:運動をしていて貧血になる原因はどんなものがありますか?
烏山先生:そうですね、一般的に言われているのは足裏の衝撃によって赤血球が壊れてしまうなどがあります。
舟山:スポーツ貧血にならないためには食事も気にしていかないといけませんよね?
烏山先生:やっぱり根本にあるのは栄養不足ですが、全体的に足りていないことがほどんどだと思います。
しかし、診察をしているとそこそこいるのが親御さんが「すごい食べるんですけどね・・・」とおっしゃることがあります。
なので確かに栄養摂取という面は大事ですが”吸収がしっかりできていのるか?”
単純に「今日は3000kcal消費したからその分食べればいい」というものでもないです。
やっぱり運動などで負荷がかかればかかるほど腸へのダメージも大きいですし、鉄に注目すると鉄の吸収を阻害するような物質も体に炎症が起きるとできていきます。
そういった面では純粋な計算式上の栄養摂取という観点からだけでは解決できないことも多いのではないか?と思っています。
舟山:僕も陸上の長距離をやっているので練習の後はすぐ食べてもお腹が痛くなったりすることがあって食べられないことがあるのですが、腸が吸収を最大にできるようにするために心がけたほうがいいことなどはありますか?
烏山先生:なかなか激しい運動をすれば腸の血流はどうしても落ちてしまいます。じゃあどうやったら防げるのか?というのは論文などにもなかなか載っていません。かつ、激しい運動をすると膵臓から出る消化酵素の量もかなり減ってしまうという研究もあります。
激しい運動をしながら腸を労わる方法がなかなか難しいんです。例えば毎日高負荷の練習をしてしまう、もしくは疲労が残った状態を長期間を続けることが一般的に言われる内臓疲労を招くと吸収面が落ちてしまいます。
具体的に腸の血流を増やすとなると簡単にできるのは入浴することです。あとは交感神経と副交感神経のバランスを保つことです。スポーツしている時以外はなるべくリラックスできるようにしておくことを心がけていくと、腸をはじめとした消化に関わる臓器に疲労を残さないことにつながります。
舟山:やはり特効薬というものはなくて、練習したら休養することが基本中の基本になるということですね。
烏山先生:個人的な意見としては「運動したあとは栄養をすぐ摂ったほうがいい」と言われることもありますが、
運動した後というのは内臓へのダメージが結構あるのでその状態で栄養を入れることはどうなんだろうな思っています。
運動直後にもし摂るなら分解されたモノをとっておいたり(プロテインではなくもっと分解された分子量が小さいもの)、
フルーツなどの消化を助けてくれるものを食べたりして、しっかりリラックスした状態で食事をする工夫をするといいと思います。
なかなかこういったことはエビデンスがないので自分で実践してみたり、アドバイスを出したりして手探りで工夫しています。
貧血になりやすい競技はありますか?
舟山:貧血になりやすい競技というのはありますか?
烏山先生:貧血になりやすい競技は陸上長距離・審美系(新体操など)の痩せていたほうが美しいとされていたりタイムが早くなるといった競技が貧血になりやすい傾向があります。
舟山:僕の周りでも体重を気にして貧血になってしまったり、夏は毎年はしれなくなってしまう人がいたりします。体重ばかりでなく貧血や食事にも気を配っていけたらと感じました。
スポーツ貧血になったらどんな治療をしますか?
舟山:貧血になってしまった場合はどのような治療をしますか?
烏山先生:有名なのは鉄剤を飲むというものが有名ですが、根本的な解決は食事量とそれが吸収できているか?というところに焦点を当てていくというのが先決だと思っています。
なので運動量と栄養のバランス、吸収のバランスを気にしていきます。
栄養の計算は栄養士さんにしてもらうにしても食事をしたら下痢をしてしまうなどの症状が出ていないかを気を配ったりします。根本的に栄養のバランス、吸収を見直していきます。
それと合わせて運動量をどうするかというところにも気を配る必要もあるかと思います。
負荷を落とすのか、値的に問題なく試合前なら負荷を保ったまま栄養面で調整するなどの対応をしたりします。
そうはいっても貧血ということは鉄が足りていないので鉄を経口で内服して飲んでもらったり、吸収を助けるビタミンCを併用したりなどをしていくことになります。
舟山:鉄を内服する以外の方法として鉄剤注射がりますが実際に使うことはあるのでしょうか?
烏山先生:「鉄剤注射は絶対ダメだ」という言葉が独り歩きしていますが、先生によってだったりケースバイケースです。
明らかに鉄が足りていない場合で鉄剤注射を使用してもどうみても鉄が過剰にならない状況でパフォーマンスが落ちている、そしてという判断かつ試合が近いというパターンで使用するケースもあるということを実際に聞きます。
一概に鉄剤注射がダメだということではなくケースバイケースになります。
舟山:”鉄が十分にある状況で過剰に注射するのがよくない”ということですか?
烏山先生:データによっては陸上の種目でヘモグロビンの数値が高ければ高いほどタイムがよくなるというものがあります。
そういう意味では足りている状況で体に鉄を入れて意図的にパフォーマンスを上げていき、それが鉄過剰に繋がって体へのダメージと引き換えになりかねないのでそいった意味での鉄剤注射はダメだよという意味で捉えてもらえるといいです。
舟山:普通は鉄が過剰になるとどういった悪影響が起こりますか?
烏山先生:基本的に人間の体には鉄を能動的に排出する機能がないといわれているので余れば鉄がどこかに勝手に沈着していきます。
それが膵臓であれば膵臓の機能が落ちたり、肝臓であれば肝機能が落ちたりなど鉄過剰によって臓器障害が起きるといわれています。
スポーツ内科にはどのような相談が来ますか?
舟山:ここまではスポーツ貧血についてお話しいただきましたが、スポーツ内科には貧血以外にどのような相談が来ますか?
烏山先生:貧血以外によくあるのが喘息の相談があります。貧血と呼吸器系の相談が一番多いです。
スポーツ内科医になりたいのですが
学生のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?
舟山:僕の個人的な質問になるのですが、僕も将来はスポーツ内科医になりたいと思っています。そのために今のうちから意識したほうがいいことってありますか?
烏山先生:今の所の希望という部分と実際に自分が患者さんに接して診療させていただける立場になったときに興味が変わってくることも多いです。
例えば僕はスポーツ内科というのを知らずに内科医になったんですけど、医師経験を経てスポーツも好きというのがずっとあると初期研修終わった整形外科診療というのにもかなり興味が出た時もあったんですよね。
今はいい意味であまり領域を絞らずにいろんなことを勉強して本当に自分が興味がある分野というのはどういうことなのかなというのを探ってみてもいいのかなと思います。
インタビュー動画はこちらから!
今回はスポーツ内科医の烏山先生にスポーツ貧血のことをお聞きしました。
症状から実際の治療まで細かくお話いただけて勉強になりました。
今回のインタビューの切り取りがインスタグラムの方でも見ることができます。
ぜひそちらでもご覧ください。
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