メンバーインタビュー第2弾〜冬季競技のトレーナー活動について(北川睦さん)〜

メンバーへのインタビュー第2弾は埼玉県で活動する北川睦さんへのインタビューです。

内容は「冬季競技のトレーナー活動について」
冬の競技のサポート特有の苦労などを聞いています!

今回のインタビュアーはインスタ班の安藤大介です!

安藤 大介(あんどう だいすけ)
・AT学生(スポーツ科学部)
・1年(新2年)
・岐阜・愛知
・陸上競技
・陸上競技以外にも、自転車競技・モータースポーツにも携わってみたいです。スポーツとは少し離れますが、アーティストさんとも関わってみたいです!

北川さんのプロフィール&冬季競技のトレーナーになったきっかけ

安藤「本日は北川さんへのインタビューです。北川先生の簡単なプロフィールを教えていただいてよろしいでしょうか?」

 

北川さん「北川睦(キタガワ ムツミ)といいます。埼玉県深谷市というガリガリくんが有名な地域で接骨院を開業しています。」

 

安藤「北川さんは冬季競技にトレーナーとして関わっているそうですが、きっかけを教えてください。」

北川さん「冬季競技に関わるようになったのは山梨学院大学の中にあるヤック鍼灸接骨院を開設する時に立ち上げに関わったことがきっかけです。その時は専門学校を卒業したてで大学4年生と同じ年でした。その時に担当した選手がスケートの選手がとても多かったです。スケートに関わった経験がなかったのですが、選手や監督に教わっていくうちに興味が出てどっぷりハマりました。そこからスケート競技全般に関わるようになりました。」

安藤「北川さんはスケートはされますか?」

北川さん「遊園地の特設のリンクで1分ほどは滑ったことがあります。笑 選手たちを見ていると颯爽と滑っていて気持ちよさそうなので滑って見たい気持ちがありますがまだ腹が括れず滑れていません。いつか機会があれば滑ってみたいと思います。笑」

スピードスケートの対応、多いケガの話

安藤「次に競技についてお伺いします。冬季競技の対応や多いケガの話を教えてください。」

北川さん「私が関わっているのがショートトラックスピードスケート(以下ショートトラック)なのでそちらを主に話したいと思います。ショートトラックでは5〜8人程度で順位を競う競技になります。コーナーで内側や外側から前に出ようとしてブレード同士がぶつかったり、体を入れられてバランスが崩れたりして、そのままコースの外にあるマットに突っ込んでのケガや氷に膝から落ちてのケガ、クラッシュに巻き込まれてのケガなどがあります。
スケート靴のブレードはかなり鋭く、刃物の上に立って滑っているようなものなので包丁が飛んでくるような危険があります。なので捻挫や脱臼・骨折などを初め、切り傷の対応をします。切り傷では過去に大会であったケガでは女子選手の前腕にスケートのブレードが刺さって橈骨で止まったということもありました。
そういった危険性があるので喉や脇の下や股間などは防刃の強い生地で保護されています他にはマットに足が刺さることもありその時に足が引っかかった状態で体が勢いついたままなので捻れてしまい捻転骨折をしてしまうという選手はいました。。」

安藤「結構危険と隣り合わせな競技なんですね」

北川さん「そうですね。また慢性的な怪我としては腰・背中・首が多いです。YouTubeなどで見てもらうとわかると思いますが、かなり体を捻りながらスタートしています。
500mの選手たちが特に多くて5000mや1万mになるとスタートはゆっくりになるので捻りは少なくなります。どうしても短距離選手だとスタートが重要なので体を強く捻ります。
その時には膝を曲げて腰を丸めてお腹の中に膝を収納するような姿勢で短くて30秒程度、長くて10分ほど滑るので腰や股関節のケガや慢性痛がある選手は多いです。稀な例として”滑る時の姿勢でのみ起こるヘルニア”というものがあります。スケート選手は背筋群が強いので立っている時には痛みが出ないということが起こります。」

安藤「そういったケガはテレビなどでは放送されないので知らない人が多いですよね。」

北川さん「そうですね。なので競技特性のケガはトレーナー同士で共有したりしています。」

大会の救護活動の状況

安藤「大会では救護活動というのは定着しているのでしょうか?」

北川さん「ショートトラックに関してはほぼほぼドクターの方が入ってくださっています。各チームに呼ばれて対応できるケガの処置をしたり、対応しきれない場合はドクターの方に診てもらいます。またドクターの処置の手伝いをすることもあります。他のチームのトレーナーさんとも協力して対応することもあります。全員で目の前でケガしている選手の対応をするという共通認識があります。」

安藤「僕は陸上競技をしているのですが陸上競技と似ていると思いました。そうやってドクターとトレーナーが連携できるといいですね」

北川さん「そうですね。そこで情報交換したり相談したりしていろいろ教えてもらったりします。またこちら目線の意見を聞いてもらうこともあります。成功談や失敗談を話すことで選手へいいものがフィードバックできればと思います。」

寒くないんですか!?


安藤
「寒さについてお聞きしたいです。スケートは外でやるイメージはないですが、W-upの方法などはどうしていますか?」

 

北川さん「スケートは皆さん室内のイメージをしているかと思います。ショートトラック・フィギュアスケート・アイスホッケーは同じリンクを使うので室内です。スピードスケートになると長野五輪で使用したエムウェーブや北海道の帯広、青森の八戸は室内会場がありますがそれ以外は屋外で競技を行います。」

安藤「そうなんですね。意外です。」

北川さん「具体的な数字はど忘れしてしまいましたが屋外でやるので気温が一定気温以下になったら試合を止めるルールがあったり、雨でリンクが溶け始めてしまうことなどもありました。そうなると外でアップができないのでエアロバイクやロードバイクを室内で使用できるような器具を使ってアップすることがあります。そうなるとどうしてもアップ不足になることもあります。ほとんどの選手は慣れていますが、屋内のリンクでしか経験がない1年生の選手などは動揺していることもありますが先輩たちがアドバイスをしてアップをおこなっています。」

ISU選手権大会及びISUイベント(即ち、ワールドカップ競技会)に関して、レフ ェリーは、競技会をその日の遅く又は翌日までレースを延期する理由として、-20°C(-4°F) という気温要因を承認するものとする。風が実際の気温を低下させることにより凍傷の危 険を増加させるということを考慮することは重要である。
(国際スケート連盟(ISU) スピードスケート競技特別規程と技術規則 2018年版 第216条 【レフェリーの義務と権限】4-b)

 

オフシーズンはどうしているんですか?

安藤「オフシーズンの選手の練習やトレーナー活動はどのようなことをしているのでしょうか?」

北川さん「スケートリンクは確か8月くらいからなんです。通年で氷を張っている場所は少なくて氷上練習ができません。大学生の場合だと夏休みには地元でロードバイクに乗ってトレーニングしたり、春先には機能向上のための練習をしていきます。そして8月から氷上練習を始めていきます。実業団選手だとオランダなどの海外に氷を求めていきます。国内で練習をしていると約半年ほどしか氷上の練習はしていません。」

安藤「実際の競技練習ができる期間はかなり短いですね」

北川さん「そうですね。なので選手は体力を落としたりしないようにロードバイクに乗って山を走ったりしています。最近ではスケートから競輪に競技変更をする選手も増えてきました。」

ケガをしたときに選手に伝えてほしいこと

安藤「選手がケガをした場合にトレーナーとしてどんなことを伝えてもらえるとスムーズに対応できますか?」

北川さん「他の競技でもあると思うんですけど、例えば腰が痛い場合に「腰が痛い」ということをまず伝えてもら痛いです。そしてそれが外傷なのか、慢性的なものなのか、その痛みはいつからなのか、どのタイミングやどのフォーム・姿勢で痛いのかを伝えてもらえると競技に詳しいトレーナーは対応がスムーズにできると思います。まだ経験の浅いトレーナーの場合には選手が具体的に伝えてくれるとトレーナーも経験を積んでいけて学びになるので信頼関係を気づいていく上でも助かります。」

安藤「介入するには具体的なことを伝えてもらえるといいんですね」

競技に関わって良かったこと・大変だったこと

 

安藤「この競技に関わって良かったこ・大変だったとなどありますか?」

 

北川さん「良かったことは自分が経験したことのない競技なのにどっぷり浸かれる競技を知ったことはトレーナー人生の中でも嬉しかったことです。またトレーナー仲間の輪や他のチームの監督などとつながることができたことです。そこから夏季競技につながることもありました。大変なことはまず寒いことです。あとは朝が早いことです。笑 あと難しいと感じたことは選手がかなり敏感で最初の方は『〇〇の姿勢のときに突っ張る感じがする』といった違和感のことを言われてそこまで気にするのかと驚いたこともありました。今はそういった対応には慣れましたが最初は苦労した点です。」

安藤「ラグビーやアメフトなどだとケガをしても試合に出たりすることもありますがスケートの選手は繊細なんですね」

北川さん「そうですね。それでもスケートの選手もボロボロな部分もある中で試合に出場していますね。今回の北京五輪でも小平選手が試合の1週間前に捻挫してスタートのフォームを左右逆にしたり、羽生選手が捻挫が治り切らないまま競技に出場していたりしました。どの競技もそうですが選手を見ていると100%万全の状態でスタートに立つのは難しいと感じてしまいますね。」

帯同後に食べたくなるものはありますか?

安藤「寒い中の帯同が終わった後に食べたくなるものはありますか?」

北川さん「とりあえずあったかいものが食べたいです。笑 あと北海道や長野などで試合なのでその土地でしか食べられないものを食べたいですね。選手たちと一緒に地元で食べられているものを聞いて食べたりしています。」

安藤「その中で印象的だった現地の食べ物はありますか?」

北川さん「”ザンギ”ですね。いわゆる唐揚げですね。釧路の遠征だったときにザンギ発祥のお店で食べました。その時は定食を頼んだのですが、一人当たり15個くらい出てきて食べるのに苦労しました。笑」

帯同のお金事情!?

安藤「帯同の時の契約について教えてもらえますか?」

北川さん「いろいろな契約があります。チームと契約するのはもちろんですが、個人で活動している選手も多いので選手個人と契約することもあります。1日分ではなくて期間を決めて契約することが多いです。冬季競技の場合は1日で行って帰ってくるということはできないので大きな金額が動きます。スケートの道具も高価なのでそこを削ってトレーナーを呼ぶのか呼ばないのかというのに頭を悩ませる部分のようです。」

これからスポーツに関わっていきたい学生へ

安藤「これからスポーツに関わりたい学生へのメッセージをお願いします。」

北川さん「私の経験の話で言うと、まずコミュニケーションをたくさん取るようにしてもらいたいと思っています。私は柔道出身ですがとてもお世話になったのはスケート、そしてラグビーやフィールドホッケーなど専門外の競技に関わってきました。
現場に出たときには自分の専門の競技以外に関わることがたくさん出てくると思います。そうするとその競技の結果の見方がよくわかりません。そういうところは選手に頭を下げて聞くことが大切だと思います。
これは恥ずかしいことではないので聞くといいと思います。次に気を付けてもらいたいことです。フォームだったり練習内容にトレーナーがどこまで口を出したらいいか難しいところですが、フォームに悩んでいる選手がいる場合は選手が悩んでいることを監督・コーチに必ず報告して対応をどうしたらいいかを相談します。
そのときに監督・コーチからアドバイスを伝えてもらうのかトレーナー側から伝えるのかを判断してもらいます。自分一人で行動してしまうとそこで監督・コーチとの信頼関係が崩れてしまいます。そういうところも含めてコミュニケーション能力が必要になると思っています。」

安藤「選手はもちろん監督・コーチを含めたチーム全体とコミュニケーションをしっかり取ることが大切なんですね。インタビューは以上になります。本日はどうもありがとうございました。」

北川さん「ありがとうございました。」

インタビューの様子は公式インスタで見ることができます!

スポリンクの公式インスタアカウントでは
今回のインタビュー動画が見ることができます。

北川さんインタビュー①
北川さんインタビュー②
北川さんインタビュー③

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